Piece Of Mind〜ココロノカケラ〜
にっかの所有するドール(SD)のなりきり日記
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今では…今なら…今も
この物語はフィクションであり、
登場する団体名・個人名は架空のものです。
その童女を見かけるようになったのは最近だった。
毎日拙い足で石段を登り、手探りで賽銭箱を探すと
5円玉を放り込むのだった。
願いはいつも同じ。
『とーたんとパパが幸せになりますように。』
そうしてお願いを済ませると、
また拙い足でふらふらと階段を下り、神像に一礼するのであった。
どこの娘かは定かではないが、
この童女、盲目であることは確かだった。
しかもこの娘、雨の日も風の日休まず来るのだ。
願いはただひとつ。
そんな童女にいつしか我は心奪われていた。
この童女の過去を知りたくなり、
我は天界でも高貴なお方とされる京天使しか入れない
宝物庫に夜中に忍び込んだ。
あぁ、紹介遅れたが我は京都の稲荷神社の使者、
稲荷の化身、慶(じょい)と申す。
ある寒い夜、我はこっそりと宝物庫に忍びこんだ。
そこには神が書き記した下界の人間の出生書があった。
厳重に鍵を外していく。
中に入るとここ数年のうちに生まれた人間の書物を探した。
「あった、これじゃ。…志(ゆき)睡蓮(すいれん)…。」
あの童女は睡蓮というのか。
そんなことを思いながら出生書のページをめくる。
しかし、そこには不自然な記述があった。
本来別であるべき両親の性が同一だったのだ。
「こ…これは…。」
「何しておる?」
声が響いた瞬間、我は飛び上がった。
「白鳥(しらとり)様!」
「稲荷の慶ではございませんか。」
「白蓮(びゃくれん)様…。」
血の気が引いていくのを感じた。
このお二方こそ天界でもっとも神のそばにいる高貴な天使、
白鳥と白蓮その人だった。
「御主、秘密を知ったな。」
「申し訳ございません…。ですが、これは一体…。」
「志庵と玲麗、そしてその娘睡蓮のことか?」
「志庵と玲麗は男同士、仔が生まれるはずなどありえませぬ。」
「それだからあなたは稲荷のままなのです。」
白蓮がころころと面白そうに笑った。
「全ては神がお決めになった。見よ、これが玲麗の嘆願書だ。」
白鳥が手をかざすとそこには10、いや、20万はくだらない数の、
嘆願書が浮かんでいた。
賽銭というのは下界の用語だ。
天界でははこの賽銭を嘆願書として扱った。
その願いはどれもひとつ。
『どうか志庵の子を抱かせてください。』
「玲麗は雨の日も風の日も雪の日もずっと通い続けたのです。」
「自分の命と引き換えでも構わぬと、願い続けた。」
「玲麗が…?」
「それだけではございませんわ。玲麗と志庵の職業は?」
「アーティストとなっておりますが…。」
「彼らの歌声に感動し、励まされ、
勇気をもらった人間の数は計り知れない。
神はそれを高く評価なさった。」
「しかし…何故完全体ではない魂を送り出したのですか?」
「試練じゃ。」
「試練?」
「玲麗と志庵が盲目の少女でも愛せるかどうか。」
「慈しんでそのハンディと共に歩んでいけるか…。」
「結果は御主も見たであろう。」
「いずれにせよ、
この秘密を知ったからには慶には消えてもらわねばなりません。」
白蓮が氷のような瞳で我を見つめた。
「ならば、我を下界に送ってください。」
「何ゆえに?」
「我があの童女の目になります。あの家族を守ります。」
「争いもない天界を捨てて、下界に行くというのか?」
「どの道、天界ではもう暮らせません。それならば…。」
「面白い。そなたの力を見せてもらおうではないか。」
白鳥が我の胸に手をかざした。
そして我は意識を失った。
「志庵、そこの食器片付けてくれ。」
「えぇ〜…俺今日疲れてるんだよね。」
「じゃぁ、スイがやるー。」
「スイは偉いなぁ。パパはダメだな。」
「ダメだねぇ〜、パパは。」
「わかったよ、やりますよぉ〜。」
バチン。
部屋が暗くなる。
「なんだ?停電か?」
「志庵…玲麗…。」
「この声は…。」
「玲麗さん知ってるの?」
「びゃくれんさまとしらとりさま…。」
「睡蓮、何故それを…。」
「説明してくれよ、玲麗さん。」
混乱した志庵が玲麗に詰め寄った。
その時、部屋に柔らかな光が射した。
「な…天使?」
「白鳥様、白蓮様。」
「久しぶりだな、玲麗。」
「お久しぶりですわね、睡蓮。」
困惑する志庵をよそに2人は丁重な挨拶を交わす。
「志庵、初めまして。」
「あなた達は?」
「俺に睡蓮を宿してくれた天使様だよ。」
「そんな話、聞いてない…だって医者はあれは奇跡だって…。」
「神様は時に奇跡という名の運命を宿すものです。」
「じゃぁ、あんたたちが…。」
「さよう。我等が睡蓮を送り込んだ。」
「じゃぁ何故睡蓮がそのことを知っているんだ?」
光が射す中、ゆっくりと睡蓮が語りだした。
「スイね、知ってたの。
玲麗とーたんとパパが子供欲しがってたこと。
でね、ある日神様の声がしたの。
『お前は不完全だけど、それを受け入れてくれる家族がいる』
って。だからスイは生まれることにしたの。」
「睡蓮…。」
「生まれてみたら、幸せだった。」
「楽しい毎日を送ってるようで何よりだわ。」
白蓮が微笑んだ。
「さて、そんな君達に願いがあってやってきた。」
白鳥が重々しい口調で話す。
「この仔を家族として受け入れてくれないか?」
白蓮が手をかざすと宙に浮いた慶の姿があった。
「狐?」
「この仔は稲荷の慶と申す。」
「睡蓮の目になりたいと自らこの姿になりました。」
「どにみち、天界ではもう暮らせぬ。
地獄にいくか下界に行くかのどちらかだ。」
白鳥がすっと目を細めた。
「地獄…。」
志庵がゴクリとつばを飲み込んだ。
「選ぶのは玲麗と志庵だ。」
「受け入れます。」
「志庵?」
「パパ?」
「睡蓮を想ってくれているなら、
それがその仔の生き甲斐なら、俺は受け入れます。」
「俺も。その仔を地獄なんかに行かせたくない。」
「よろしいのですね?」
「はい。」
「では、玲麗、そっと抱きしめなさい。」
玲麗が慶の体をそっと抱きしめる。
すると狐の姿だった慶が人間へと変わった。
「奥方殿…我は睡蓮、いや…姉上を守ってみせます。」
薄く目を開けてそう言うと、慶はまた深い眠りに落ちていった。
「我等も帰ろうか。玲麗、志庵、達者でな。」
「玲麗、志庵、良い人生を送りなさい。」
白鳥と白蓮はそうつぶやいて消えていった。
何事もなかったかのように灯りがつく。
「夢じゃないんだよな…?」
「夢じゃない。」
「スイに弟ができた!」
「仲良くするんだぞ?」
「パパに言われなくてもわかってるよぉ。」
何事もなかったように空気が明るくなる。
その頃空からその様子を見ていた白鳥と白蓮は…。
「良かったですわね。きっと慶も幸せでしょう。」
「それはこれからの行い次第だろう。
榊様の気まぐれも程々にしていただかなければ。」
月明かりにふわりと浮かんだ白鳥の顔は、
どこかほっとした様子だった。
奇跡とは神様の気まぐれ。
誰にでも起こる事ないし、可能性は無限大である。
そんな小さな小話をひとつ。
今日の夢見ヶ丘にどうでしょうか?
―FIN―
登場する団体名・個人名は架空のものです。
その童女を見かけるようになったのは最近だった。
毎日拙い足で石段を登り、手探りで賽銭箱を探すと
5円玉を放り込むのだった。
願いはいつも同じ。
『とーたんとパパが幸せになりますように。』
そうしてお願いを済ませると、
また拙い足でふらふらと階段を下り、神像に一礼するのであった。
どこの娘かは定かではないが、
この童女、盲目であることは確かだった。
しかもこの娘、雨の日も風の日休まず来るのだ。
願いはただひとつ。
そんな童女にいつしか我は心奪われていた。
この童女の過去を知りたくなり、
我は天界でも高貴なお方とされる京天使しか入れない
宝物庫に夜中に忍び込んだ。
あぁ、紹介遅れたが我は京都の稲荷神社の使者、
稲荷の化身、慶(じょい)と申す。
ある寒い夜、我はこっそりと宝物庫に忍びこんだ。
そこには神が書き記した下界の人間の出生書があった。
厳重に鍵を外していく。
中に入るとここ数年のうちに生まれた人間の書物を探した。
「あった、これじゃ。…志(ゆき)睡蓮(すいれん)…。」
あの童女は睡蓮というのか。
そんなことを思いながら出生書のページをめくる。
しかし、そこには不自然な記述があった。
本来別であるべき両親の性が同一だったのだ。
「こ…これは…。」
「何しておる?」
声が響いた瞬間、我は飛び上がった。
「白鳥(しらとり)様!」
「稲荷の慶ではございませんか。」
「白蓮(びゃくれん)様…。」
血の気が引いていくのを感じた。
このお二方こそ天界でもっとも神のそばにいる高貴な天使、
白鳥と白蓮その人だった。
「御主、秘密を知ったな。」
「申し訳ございません…。ですが、これは一体…。」
「志庵と玲麗、そしてその娘睡蓮のことか?」
「志庵と玲麗は男同士、仔が生まれるはずなどありえませぬ。」
「それだからあなたは稲荷のままなのです。」
白蓮がころころと面白そうに笑った。
「全ては神がお決めになった。見よ、これが玲麗の嘆願書だ。」
白鳥が手をかざすとそこには10、いや、20万はくだらない数の、
嘆願書が浮かんでいた。
賽銭というのは下界の用語だ。
天界でははこの賽銭を嘆願書として扱った。
その願いはどれもひとつ。
『どうか志庵の子を抱かせてください。』
「玲麗は雨の日も風の日も雪の日もずっと通い続けたのです。」
「自分の命と引き換えでも構わぬと、願い続けた。」
「玲麗が…?」
「それだけではございませんわ。玲麗と志庵の職業は?」
「アーティストとなっておりますが…。」
「彼らの歌声に感動し、励まされ、
勇気をもらった人間の数は計り知れない。
神はそれを高く評価なさった。」
「しかし…何故完全体ではない魂を送り出したのですか?」
「試練じゃ。」
「試練?」
「玲麗と志庵が盲目の少女でも愛せるかどうか。」
「慈しんでそのハンディと共に歩んでいけるか…。」
「結果は御主も見たであろう。」
「いずれにせよ、
この秘密を知ったからには慶には消えてもらわねばなりません。」
白蓮が氷のような瞳で我を見つめた。
「ならば、我を下界に送ってください。」
「何ゆえに?」
「我があの童女の目になります。あの家族を守ります。」
「争いもない天界を捨てて、下界に行くというのか?」
「どの道、天界ではもう暮らせません。それならば…。」
「面白い。そなたの力を見せてもらおうではないか。」
白鳥が我の胸に手をかざした。
そして我は意識を失った。
「志庵、そこの食器片付けてくれ。」
「えぇ〜…俺今日疲れてるんだよね。」
「じゃぁ、スイがやるー。」
「スイは偉いなぁ。パパはダメだな。」
「ダメだねぇ〜、パパは。」
「わかったよ、やりますよぉ〜。」
バチン。
部屋が暗くなる。
「なんだ?停電か?」
「志庵…玲麗…。」
「この声は…。」
「玲麗さん知ってるの?」
「びゃくれんさまとしらとりさま…。」
「睡蓮、何故それを…。」
「説明してくれよ、玲麗さん。」
混乱した志庵が玲麗に詰め寄った。
その時、部屋に柔らかな光が射した。
「な…天使?」
「白鳥様、白蓮様。」
「久しぶりだな、玲麗。」
「お久しぶりですわね、睡蓮。」
困惑する志庵をよそに2人は丁重な挨拶を交わす。
「志庵、初めまして。」
「あなた達は?」
「俺に睡蓮を宿してくれた天使様だよ。」
「そんな話、聞いてない…だって医者はあれは奇跡だって…。」
「神様は時に奇跡という名の運命を宿すものです。」
「じゃぁ、あんたたちが…。」
「さよう。我等が睡蓮を送り込んだ。」
「じゃぁ何故睡蓮がそのことを知っているんだ?」
光が射す中、ゆっくりと睡蓮が語りだした。
「スイね、知ってたの。
玲麗とーたんとパパが子供欲しがってたこと。
でね、ある日神様の声がしたの。
『お前は不完全だけど、それを受け入れてくれる家族がいる』
って。だからスイは生まれることにしたの。」
「睡蓮…。」
「生まれてみたら、幸せだった。」
「楽しい毎日を送ってるようで何よりだわ。」
白蓮が微笑んだ。
「さて、そんな君達に願いがあってやってきた。」
白鳥が重々しい口調で話す。
「この仔を家族として受け入れてくれないか?」
白蓮が手をかざすと宙に浮いた慶の姿があった。
「狐?」
「この仔は稲荷の慶と申す。」
「睡蓮の目になりたいと自らこの姿になりました。」
「どにみち、天界ではもう暮らせぬ。
地獄にいくか下界に行くかのどちらかだ。」
白鳥がすっと目を細めた。
「地獄…。」
志庵がゴクリとつばを飲み込んだ。
「選ぶのは玲麗と志庵だ。」
「受け入れます。」
「志庵?」
「パパ?」
「睡蓮を想ってくれているなら、
それがその仔の生き甲斐なら、俺は受け入れます。」
「俺も。その仔を地獄なんかに行かせたくない。」
「よろしいのですね?」
「はい。」
「では、玲麗、そっと抱きしめなさい。」
玲麗が慶の体をそっと抱きしめる。
すると狐の姿だった慶が人間へと変わった。
「奥方殿…我は睡蓮、いや…姉上を守ってみせます。」
薄く目を開けてそう言うと、慶はまた深い眠りに落ちていった。
「我等も帰ろうか。玲麗、志庵、達者でな。」
「玲麗、志庵、良い人生を送りなさい。」
白鳥と白蓮はそうつぶやいて消えていった。
何事もなかったかのように灯りがつく。
「夢じゃないんだよな…?」
「夢じゃない。」
「スイに弟ができた!」
「仲良くするんだぞ?」
「パパに言われなくてもわかってるよぉ。」
何事もなかったように空気が明るくなる。
その頃空からその様子を見ていた白鳥と白蓮は…。
「良かったですわね。きっと慶も幸せでしょう。」
「それはこれからの行い次第だろう。
榊様の気まぐれも程々にしていただかなければ。」
月明かりにふわりと浮かんだ白鳥の顔は、
どこかほっとした様子だった。
奇跡とは神様の気まぐれ。
誰にでも起こる事ないし、可能性は無限大である。
そんな小さな小話をひとつ。
今日の夢見ヶ丘にどうでしょうか?
―FIN―
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